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【論文メモ】AI×ものづくりの研究は今どこに向かっているのか — 492本を分析したレビューを読んだ|工場プログラマーのモダン開発プラクティス
開発プラクティス

【論文メモ】AI×ものづくりの研究は今どこに向かっているのか — 492本を分析したレビューを読んだ

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どうも、コンです。

製造業のAIと聞くと、自分はなんとなく「画像認識」「センサーデータ」「最適化」あたりを思い浮かべます。ただ、世界全体で見たときに研究はどこに向かっているのかは、正直あまり分かっていませんでした。

そんなときに、ギリシャ・マケドニア大学の研究者が世界の論文 492本 を集めて分析した書誌計量レビューを見つけたので、工場プログラマー目線で読んでみました。意外だった点を中心に整理しておきます。

ざっくり何の論文か

2025年に Frontiers in Sustainability に掲載された Bitzenis らの論文です。ひと言でいうと、「AIとMLが、工場やビジネスをどう効率化して、地球にもやさしい社会を作るのに役立っているか」を、24年分(2000〜2024年)の Scopus 論文 492本を集めて分析した というもの。

R言語の Bibliometrix というパッケージで、キーワード・引用・国別の傾向まで一気通貫で整理されています。

少し基礎知識:AIとMLって何が違うのか

論文では、AI(人工知能)とML(機械学習)の関係を整理してから本題に入っています。普段ぼんやり使い分けている言葉なので、改めて読んでおきました。

AI(広義)の中にML(機械学習)が含まれる入れ子の関係図

  • AI(人工知能):人間のような判断ができるシステム全般を指す、大きなくくり
  • ML(機械学習):データから自動的にルールを学ぶしくみ。AIの「中身」のひとつ

普段Pythonで TensorFlow や scikit-learn を触っているのは、まさに ML の部分にあたります。「AIをやっている」と一言で言いたくなる場面で、実際には「AI(広義)の中の ML(狭義)の一部のアルゴリズム」を使っている、という入れ子構造になっていました。

機械学習の4つのタイプ

論文ではさらに、ML を大きく4タイプに分けて、工場での使いどころを整理していました。

機械学習の4つのタイプ:教師あり学習・教師なし学習・半教師あり学習・強化学習

普段現場で耳にする「異常検知」や「予知保全」が、それぞれ ML のどのタイプに位置しているのか、改めて見ると頭の中が整理されます。

🚀 ここからが面白い!分析結果

📈結果1:研究は2021年あたりから一気に増えていた

まず驚いたのが論文数の伸び方です。

年ごとの論文数(2000〜2024年)の推移グラフ

2000〜2018年は年1〜7本でほぼ横ばい、2019年で15本、2020年で31本、と地味に増えてきていたのが、2021年あたりから一気に立ち上がって、2024年は183本 まで届いていました。年間成長率は 約24%。生成AIの登場や Industry 4.0 / 5.0 の議論が広がったタイミングと重なっていて、ここ数年で一気にホットになった分野なんだな、というのがビジュアルで見えます。

🌍結果2:どの国が研究を引っ張っているのか

引用数で並べると、トップは中国・英国・インド・米国の順でした。

引用数トップ10の国々(中国・英国・インド・米国ほか)

ここで面白いのが、「総数」と「1本あたりの引用数」で景色がまったく違うことです。

  • 中国:総数 1,301(1本あたり 13.6)
  • 英国:総数 758(1本あたり 58.3
  • シンガポール:総数 108(1本あたり 54.0
  • 米国:総数 421(1本あたり 23.4)

中国は 量で勝負、英国とシンガポールは 1本ずつの引用効率で勝負、というのが綺麗に分かれています。

そしてもうひとつ気になったのが、このトップ10に日本が入っていない ことでした。日本の研究力がやはり下がっているんだな。。。って感じです。

🔑結果3:どんなキーワードが熱いの?

頻出キーワードはこの並びでした。

順位キーワード出現回数
1⭐︎sustainable development396
2⭐︎machine learning238
3⭐︎artificial intelligence164
4China76
5crops(農作物)72
6decision making70

機械学習・AIが上位なのは想定内でしたが、5位に「crops(農作物)」が入っているのが目を引きます、論文の射程が「製造業のライン」だけでなく「持続可能な生産全般」だったので、結果として農業や食料生産まで広く含む集合になっていた、という構造が見えてきます。

🤝 結果4:国際共同研究のハブは中国

国同士の共同研究を見ると、中国がハブになって世界各国と組んでいる 状況。

・中国⇔米国(8件)
・中国⇔英国(6件)
・中国⇔パキスタン(5件)
・インド ⇔ 米国(5件)

一方で、アフリカと中南米はほぼ空白地帯で、論文の中でも「グローバル研究のはずが地理的に偏っている」という課題として指摘されていました。

🌱 AI/MLが「持続可能な社会」にどう貢献?

持続可能な社会づくりにおいて、AI/MLが貢献できる応用領域として、論文では次の5つが紹介されていました。

AI/MLが持続可能性に貢献する5つの領域:サプライチェーン・エネルギー管理・ロボット自動化・循環経済・精密農業
応用領域論文での扱い
サプライチェーン最適化在庫管理・需要予測でムダを削減
エネルギー管理リアルタイムで電力需給を調整、CO2削減
ロボット自動化生産ラインの精密化・高速化
循環経済製品設計、リユース・リサイクル機会の発見
精密農業作物管理、収量予測、水管理

「ものづくり」と聞くと製造業のラインや工場のイメージが先に来ますが、論文の枠組みでは 「精密農業」も同じ並びで5領域の1つ として扱われていました。

⚠️ この研究が「足りてない」と指摘していること

論文の終盤で、研究者たちは「まだここが手薄」と4つの方向を挙げていました。

研究のギャップ4つ:倫理・地域偏り・中小企業の不在・業界偏り

個人的に一番響いたのは 3 の「中小企業の不在」 でした。実装現場で見ていると、AIをまともに導入できているのはやはり大企業中心、というのは肌感覚と合っていて、世界規模や研究でも同じ偏りがあるんだな、と感じました。

ざっくり3行でまとめると

論文の主張を3行に圧縮するとこんな感じでしょうか。

  1. AI/MLは産業の効率化と「地球にやさしい開発」に欠かせないツールになっている(特に2020年以降にブーム)
  2. 中国・米英・インドが研究を引っ張っているが、世界全体では地理にも業界にもかなり偏りがある
  3. 中小企業・途上国・倫理面に目を向けないと、本当の「持続可能性」は実現しない

感想

自分が日々見ていた「製造業AI = 画像・センサー・最適化」という3軸が、世界全体では「持続可能性」というもっと大きな枠の中の一部分だった、というのが今回いちばんの気づきでした。

もうひとつ意外だったのが、論文の枠組みで「精密農業」が「サプライチェーン最適化」「ロボット自動化」と並列に置かれていたことです。自分はこれまで 「工場」 と聞くと自動車工場や食品工場のような工業系のラインしか思い描いていなかったのですが、論文を読みながら「農業ももう工場なんだ」と素直に気づかされました。日本だと農地と工場はまだ別カテゴリで語られる印象が強いので、世界ではすでに「管理された生産システム」として地続きで扱われているのかもしれません。

研究発信で日本の存在感が薄いことや、中小企業の研究が抜け落ちていることなど、気になるニュースも拾えました。学習メモとして残しておきます。

そして読み終えたあとに残ったのは、「では実際に各領域でどんな技術や手法が使われているんだろう」という素朴な興味です。今回は全体地図を眺めただけだったので、次はもう少し中に潜って、サプライチェーン最適化や精密農業で動いている AI の中身を覗いてみたいな、と思っています。

参考

  • Bitzenis A., Koutsoupias N., Nosios M. (2025). 「Artificial intelligence and machine learning in production efficiency enhancement and sustainable development: a comprehensive bibliometric review」 Frontiers in Sustainability, 5:1508647. 論文ページ
  • Stanford HAI – The 2025 AI Index Report(補足の年次資料)

ここまで読んでいただきありがとうございました。論文読むのも面白いですね。今後はちょっと論文読んでみるのも面白いかもです。それでは、また。

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